不当課税の一例として、時価評価の問題が有ります。
課税する評価額について、税法では時価と定義しています。
しかし、国税庁の財産評価基本通達では、
時価とは、課税時期において、それぞれの財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額をいい、『その価額は、この通達の定めによって評価した価額による。』 としています。
しかし、通達の定めによって評価した価額が、時価を越えていない事の根拠を一切示していません。
上記の通達は課税の事務処理低減の為、合理的とされていますが、無道路の宅地や私道や底地等の制限のある土地は、通達での評価額が時価より高額な評価額になっています。
例1、接道条件を満たしていない土地
図1(国税庁HP質疑応答事例より、接道幅は1メートルで説明されています)
建築基準法で建物を建築する時は、建築基準法上の道路に2メートル接道していなければ建築できません。土地は建物を建築して有効活用できるので評価され価格が付きます。都心では戦後に建築された家で、道路に2メートル接道していない家が多数残っています、このような家は建替えも増築もできないので売却しようとしても長期間かかり売却額も接道条件を満たした土地の半額以下です。
しかし、財産評価基本通では 無道路地としての控除額は接道義務に基づいて最小限度の通路に拡幅する場合の、その拡幅する部分に相当する価額を減額できるのみです。
2メートルに足りない部分の面積、2メートル-1メートル×奥行の面積の金額を宅地評価額より減額できる
(図1の右側のように、幅1メートル×奥行き5メートル=5平米の面積の土地評価額のみ減額する)
都心でこのような宅地で自宅が有り子供がマンションを購入して別居している場合、多額の評価額になり、平成27年より基礎控除が引下げられるので相続税が課税される場合が多くなり、その為に相続税納付の為に土地を売却しようとしても売却できず苦しむ人が増えてきます。
そもそも、接道義務を満たさない宅地は戦後長期間にわたり接道義務を満たすことができずにいた宅地で、それを最小限度の通路に拡幅部分を購入した価格のみを減額する土地評価方法が、現実からかけ離れた発想です。
例2、貸した土地(底地)
戦後貸して借地権が発生している土地は、借地法で正当理由がなければ返却されず、又、地代も固定資産税の何倍と言われ収益は僅かで土地が帰ってくることは有りません、そのような土地を売却しようとしても第三者の買手は底地買取会社ぐらいです。
しかし、国税庁の財産評価基本通達では、
自用地としての価額-自用地としての価額×借地権割合
としています。
路線価からの宅地価格が1億円、借地権割合が50%の時
100,000,000円-(100,000,000×0.5)=50,000,000円
五千万円の評価額になります、しかし、底地買取会社が宅地の50%で購入する事はありえません。
土地の専門家で、借地人に50%の金額で売却した事例が有ると言う人がいますが、借地人への売却は時価では有りません。
国土交通省が不動産鑑定士へ公開している、不動産鑑定評価基準では、
限定価格とは、市場性を有する不動産について、不動産と取得する他の不動産と の併合又は不動産の一部を取得する際の分割等に基づき正常価格と同一の市場概念 の下において形成されるであろう市場価値と乖離することにより、市場が相対的に 限定される場合における取得部分の当該市場限定に基づく市場価値を適正に表示す る価格をいう。
限定価格を求める場合を例示すれば、次のとおりである。
(1)借地権者が底地の併合を目的とする売買に関連する場合
(2)隣接不動産の併合を目的とする売買に関連する場合
(3)経済合理性に反する不動産の分割を前提とする売買に関連する場合
と記述されているように、利害関係者という限定された者の売買金額で、 時価の説明に有る、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額とはかけ離れた金額です。
時価を超えた評価額での課税は、法令違反の犯罪行為です。
皆さんで是正するように行動しましょう。