都心の場合、不動産の財産評価は毎年国税庁から発表される路線価で行われています。
宅地に面した道路に路線価が設定されて、その路線価を元に宅地の財産評価額が決められ、その財産評価額を元に税率をかけて税額が決定します。
その路線価が、どのように決められているか疑問を抱き、国税庁に路線価の根拠の行政文書開示請求を行いました。
- 国税庁の対応。
国税庁では各地区の路線価作成業務は行っていない、各地区の担当税務署が行っているので、担当税務署に情報開示請求してもらいたい。 - 担当税務署の対応。
最初は、個別の路線価設定の行政文書は存在しないと回答する。
では、どのように路線価を設定しているのかと問うと、以下の回答があった。
各地区毎に、複数の基準宅地を設定して、その基準宅地の不動産鑑定書を不動産鑑定士に依頼して、基準宅地の鑑定評価額を決定する。
基準宅地の鑑定評価額を元に、各道路の路線価を決められた比率で設定する。
決められた比率の根拠を聞くと、昔から決められた比率であると曖昧な回答をする。
しかたがないので、複数の基準宅地の不動産鑑定書を情報開示請求する。 - 担当税務署より開示された、不動産鑑定書について。
不動産鑑定書は、6頁の簡単なもので、根拠とする取引事例は3~6例しか記載されていない。
借地権割合については、取引事例は一切なく、地元精通者の意見を勘案して査定したと、信じられない根拠が記載されていた。
現在、不動産サイトの宅地売買情報でも借地権宅地の売出は多数あるので、借地権の取引事例は多数収集できるはずです。
不動産鑑定は不動産の時価(正常価格)を鑑定評価するはずだが、上記のように取引事例を根拠としない、不動産鑑定評価書が多数ある。取引事例を根本的な根拠としない時価は、社会常識で時価とは言わないと思う。
貸した土地(底地)については、不動産鑑定書に記載がないので、担当税務署に確認すると、宅地の価格から借地権割合を引いた金額を、貸した土地(底地)の評価額とする事に決まっていると、回答される。
このように、6頁程度の簡単な不動産鑑定書で、国民に課税している事が分かった。
しかし、国民が多数の取引事例を記載した不動産鑑定書を元に税務申告した場合、税務署が大部分は否認して認めていない、私の手元に、”その鑑定書は誤っている”と記載した税務署の否認文書がある。
日本では、不動産の鑑定評価に関する法律で、不動産鑑定士でない者が不動産の鑑定をする事は違法です、不動産鑑定士の存在しない税務署が、不動産鑑定士の鑑定書を否認する事は、鑑定業務と同じで違法に思えるが、なぜか、不動産鑑定士の業界はなにも問題視していません。
なぜでしょう、それは、日本の不動産鑑定士の仕事の大部分が行政から出されている事に関連している事が分かりました。
毎年、公示価格・路線価設定の為に、国土交通省や国税局から鑑定評価の仕事が出され、三年おきには市町村から、固定資産税路線価設定の仕事が出ています。
このように、行政の下請けとしての仕事が多い不動産鑑定士の人々が、行政について意見を述べることは、難しいのかもしれません。
税務署からしたら、下請け業者である不動産鑑定士の鑑定書は低く評価しているのかもしれません。
不当な課税を調べると、不動産評価が大きな問題に思えます。
そのようになった、原因の一つが行政の下請けになって、不当な事に声を出せないでいる不動産鑑定士の人達の立場に問題があると思えます。